海外市場への進出は大きなチャンスをもたらします。しかしその一方で、現地の市場環境や競合状況、消費者ニーズを正しく把握せずに先へ進めると、思わぬ失敗を招きかねません。そうならないためにも、進出する際は事前に市場調査をしっかり行い、なるべくリスクを減らしておきましょう。本記事では、海外の市場調査で確認すべきポイントや進め方、注意点について解説します。
市場調査とは
市場調査の目的
市場調査を行わずに海外進出を試みることは、羅針盤や地図を持たずに航海に出るようなものです。競合との差別化や価格設定、ターゲット顧客層の特定、販売方法の確立など、すべてが手探りで進められることになり、失敗のリスクが高まってしまうのです。市場調査は単なる情報収集ではなく、海外市場での成功に向けた重要な土台づくりの役割も担っています。海外進出を少しでも成功に近づけるため、事前に市場調査を行いましょう。
市場調査を行う目的は、主に以下の5つのポイントにまとめられます。

市場調査の準備
市場調査を行う際には、「どのような情報が欲しいのか」という最も重要なポイントを明確にしましょう。そして、その情報はどのようなアクションにつなげるためなのかを考えることが大切です。これらを決めずに調査を進めると、情報収集そのものが目的になってしまう恐れがあります。調査はあくまでもアクションにつなげるための手段であり、そのアクションに必要な情報を逆算して設計することが求められます。また、予算も事前に検討しておきましょう。調査範囲が広がれば広がるほど、それに伴い費用も膨らみます。限られた予算の中で、どの情報を優先的に収集すべきか、欲しい情報と費用とのバランスを意識した計画を立てることで、効果的な市場調査に繋げることができます。
市場調査の進め方
市場調査のよくある悩み
自社で市場調査を進めようとする場合、現地の土地勘がなく、どこから調査を始めればよいか分からないといった悩みをよく耳にします。また、現地の言語を話せないために、様々な壁に突き当たって思うように調査が進まないということも多々あります。消費者や関係者の「生の声」を直接拾えなかったり、現地のニーズを把握するためのインタビュー調査で調査対象者を集めることができなかったり、競合企業の情報収集が思うに任せないという状況に陥りがちです。市場調査レポートも、信頼に値するものか判断が難しいため、現地事情に精通したパートナーへの市場調査依頼が増えています。
市場調査の進め方
最初に行うべきことは、「調査の目的確認」です。どのような情報が必要なのか、何を明らかにしたいのかを整理します。次に「調査設計」を行います。ここでは、必要な情報をどの手法で収集し、どのように分析するかを具体的に決めていきます。調査方法としては、インタビュー、アンケート、デスクリサーチなど多様な選択肢があり、目的に応じた最適な手段を選びます。設計が整ったら、「調査の実施」に移ります。データを収集して「分析」を行い、得られた情報を体系的に整理して読み解きます。最後に、その分析結果をもとに「次のアクション」を検討します。市場調査は、情報収集がゴールではなく、その先の戦略立案や意思決定に結びつけることが大切なポイントです。

市場調査の手段・方法
市場調査では、目的に応じて様々な手段・方法が用いられます。その代表的なものが「デスクサーチ」です。これは、メディア記事、プレスリリース、公的機関や民間のデータベース、企業のホームページ、SNSなど、二次情報を収集・整理する方法で、コストを抑えつつ幅広い情報を集める際に効果的な方法です。「アンケート調査」も一般的な手段であり、一定数の回答を得ることで数値化して傾向を把握できます。さらに、個別に深掘りする「デプスインタビュー」や、複数人による意見交換を通してインサイトを得る「フォーカスグループインタビュー」も、ニーズや市場特性を探る上で有効です。最近では、市場調査の初期段階にAIを活用するケースも増えてきています。大量の情報を短時間で整理することに役立ち、調査の効率化を図ることができます。
市場調査のポイント
失敗しないための事前対策
市場調査の失敗を避けるためには、調査設計がとても重要となります。調査の目的に合わせて最適な情報収集と分析方法を決めていきますが、その方法が適切でないと、調査の精度や効率に大きな影響を及ぼしてしまいます。調査設計をより精緻なものにするためには、対象となる業界の全体像を事前に把握しておくことが必要です。それにより調査の焦点を絞り込み、無駄のない効率的な情報収集が可能になります。
非常にニッチな領域に関して市場調査を行う場合、情報の入手が難しいことがあります。統計的に十分な量の情報がなくても、数値化されない情報のみで、意思決定をしなければならないケースがあります。特に、海外市場や新興産業などではこうした課題に直面することが多く、想定外の状況にも柔軟に対応できる体制を整えておくと安心です。このように、事前に十分な調査計画を立てると同時に、不測の事態に陥った時の対応策も想定しておくことが市場調査を円滑に進めるためのカギといえます。
海外代理店の活用
海外における市場調査は、自社だけで行うと必要以上に時間と手間がかかってしまうことも少なくありません。海外市場調査会社をうまく活用することで、結果的に時間とコストを削減することに繋がります。信頼できる海外市場調査会社を見極める方法は、まず海外進出の目的をきちんと把握し、その目的達成に向けた過不足のない調査内容を提案してくれるかどうかです。調査の目的は、最終的にアクションに結びつけることにあるため、その前提をしっかりと踏まえて調査設計を行ってくれる調査会社を選びましょう。また、業界に対する専門知識を持っていることはもちろんですが、対象国の市場環境や商習慣を理解しているかどうかも確認が必要です。特に、海外市場の調査を依頼する場合、現地の商習慣や文化を踏まえた調査が求められるため、調査会社の経験や知識は非常に大きな役割を果たします。
事例
海外市場調査サポート事例①
インドネシアやベトナムを始めとする東南アジア諸国では、現地言語でないと入手できない情報が多くあります。クライアントもまさにその点で苦労されて、十分な情報を得られていませんでした。実際に企業に問い合わせをしても返信がなく、面談まで進めることができず立ち往生しているという状況でした。
そこで当社は、現地に根ざしたネットワークや現地企業向けに公開されている企業データベースなどを活用し、対象企業のリストアップを行いました。OEM能力の有無、日本企業との取引実績、その他会社業績等についてヒアリングを実施し、得られた情報を元に確度の高いリスト作成を行いました。対象企業との面談も、現地言語でのアプローチによって、高いアポ獲得率を実現することができました。
海外市場調査サポート事例②
東南アジアへの進出を検討し、既に対象国で市場調査を行っているものの、十分な調査対象者数を確保できていないクライアントから相談いただきました。まずは現状を元に2カ国を選定し、当社のネットワークを駆使して、対象セグメントとなる調査対象者の確保に着手しました。それとともに、サンプルの国内輸送からデプスインタビューの実施までを行ったことで、2カ国の同時分析が可能になりました。それにより両市場の傾向がより明確になったことで、比較検討がしやすくなったのです。また、対象国では、法的定義が明確にされていない製品であったため、本件に見合った規制調査を得意とする弁護士事務所を探して依頼し、さらに調査項目の設定からディレクション、調査結果を元にしたリーガルリスクの分析などのサポートまで行いました。
まとめ
海外進出を成功させるには、市場調査が必要不可欠です。しかしながら、自社のみで必要な情報を収集するには限界があるため、現地に精通したパートナーに依頼することが近道です。TSIが提供する海外市場調査サービスは、単なる情報収集・調査だけではなく、アクションを前提にした調査を行い、実際のビジネス戦略に結びつけることを重視しています。さらに、ローカルネットワークを活用した現地のリアルな情報収集力と、業界の専門知識が求められる調査を強みとしていますので、業界特有の課題にも対応することが可能です。費用を抑えた調査パッケージも用意していますので、海外での市場調査をご検討されている方は、お気軽にお問い合わせください。