対象企業 | |
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事業内容 | 産業用ロボット関連製品の製造および販売 |
所在地 | EU |
売上高 | 約18億円 |
従業員 | 約60名 |
譲渡理由 | 相乗効果のある企業への傘下入り |
譲受企業 | |
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事業内容 | 産業用ロボット関連製品の製造および販売 |
所在地 | 日本 |
売上高 | 約220億円 |
従業員 | 約800名 |
買収理由 | グローバル展開における基盤の強化 |
- 1980年代後半に設立、2000年代に入って、自動車関連メーカー子会社に。
- しかし親会社との相乗効果薄く、シナジーの強い企業の傘下となることを希望。
- 経営陣は創業家、それを支えるメンバーでバランスが取れており、決断が速い。
- 買収についてはこれまで経験がなく、信頼できるアドバイザーを希望。
本件の経緯
- 某年11月売主FAと関係する日系FAから買収提案
グローバルなFAネットワークに参加する日系FAが譲受企業に案件の紹介
- 翌年1月当社にご相談
譲受企業は買収経験がなく、さらに海外案件でもあり当社に対応方法などのご相談
当社からは以下の通り、提案。2月より顧問契約締結
※提案内容- 社内に社長直轄の買収検討チームを結成
- 当社は買収検討チームの顧問として対応
- FA及びDD委託先は別途検討し、その決定に向けたあらゆるサポートを行う
- 初期面談、LOI提出(2月末)までは、譲受企業と当社で対応
※提案の理由- 本件は迅速に進める必要があり、EUにネットワークを持っているFA、法律事務所、会計事務所を選抜するのが望ましい
- しかし本件を期待通りのスピードで実施するには、譲受企業がかなり積極的に進める必要がある
- また、そうすることにより譲受企業にノウハウが残る
- 2月LOIの作成と提出
- 売手から受領したIM(企業概要書)をもとに買収提案内容(買収価格、人材等その他の条件)を検討、考え方などのアドバイス
- LOI案の作成及び英語翻訳(最終チェックは当社顧問弁護士に依頼)
- 2月売手とのオンライン面談
売手とのオンライン面談に先立ち、質問事項、質問してもよいことよくないこと、など詳細な相談に対してアドバイス
- 2月FAの決定
- FA選定に関し、打診すべきFAなどを譲受企業のステークホルダー(証券会社、メインバンク、監査法人その他)を考慮しながらリストアップ
- コネクションのない先には当社から紹介
- 事前に価格のイメージ、決定する際に考えるべきことなど、詳細な相談にも対応
- 特にタイトなスケジュールを含め、クロージングまでの詳細なスケジュールの提案を重視するようにアドバイス
- 2月DD委託先の決定
- 通常の選抜プロセスを説明しつつ、今回のケースではスピードアップを重視し、FA(候補)からも提案していただくようにアドバイス
- PMI(買収後の経営)を想定して決定することなど、決定する際に考えるべきことをアドバイス
- 特にタイトなスケジュールを含め、クロージングまでの詳細なスケジュールの提案を重視するようにアドバイス
- 3月・4月LOI提出
売手FAにLOIを提出
- 3月・4月FAおよびDD委託先の決定
- 各社からの提案書を共有、内容を検討し決定
- 提案書から検討した主な項目は以下の通り
- 現地EUでの対応レベル
- 価格(追加費用の有無を含む)
- スケジュールの具体性
- 3月・4月現地訪問
現地訪問前に、確認すべきことなどの社内打ち合わせに同席
- 3月・4月Final Offerの提出
FAと作成した、Final Offer Draftを確認
- 4月4月末に買収契約締結
成約のポイント
本件は、譲受企業にとって「事実上初めての買収、そしてそれがクロスボーダー案件」というシビアな検討でありました。譲受企業は斯界で一定の存在感を有しており、それ故、対象企業から買手候補として指名されていました。しかしながら、売手FAによる買手へのアクセスは、対象企業FAのパーソナルネットワークに属する某国内ブティックからのコールドコールアクセスであったため、その信頼性の確認からスタートしなければならず、結果として、譲受企業にとっては対象企業FAから提示されたスケジュールはかなりタイトなものとなりました。
そこで、当社は譲受企業との全面的な信頼関係をベースに、某国内ブティックからの巻取りを積極的に行いました。対象企業FAからのスケジュール提示を遵守できるよう、当社のリソースに捉われることなく、複数のベストな座組候補を譲受企業に提示し、譲受企業もそれに則りチームアップ。その座組が有効に機能し、結果としてオファーが来てから6か月、検討開始からわずか4か月でのクロージングとなった、クロスボーダーM&Aとしては稀有なスピード感を持った案件となりました。
もう一つの成約の決め手は、トップを含めた譲受企業経営陣の決断力とチームワークにあります。具体的には検討構成員の意見交換を有効化するトップの謙虚さと、役割分担の明確さが印象に残りました。
オーナー企業からスタートした対象会社は、一度目のM&Aにより複合企業である売手の傘下入りするという経緯がありました。この為、対象会社にとって二度目のM&Aとなる今回のディールは、売却プロセスに長けた売手による、オーナーに依拠しない経営体制の確立した対象会社への買収検討となったことも、譲受企業にとって取り組みやすい案件であったと言えましょう。