近年、国内市場の縮小や地政学リスクの回避を背景として、海外進出を目指す企業が増加しています。それは販路拡大や事業成長のチャンスとなる一方で、文化や規制の違いなど課題も多く、海外進出の成功には適切な手段選びと事前準備が不可欠です。本記事では、スモールスタートで海外進出をするための方法をご紹介します。
海外進出を目指す企業の増加
海外進出をする目的
かつて日本企業の海外展開といえば、大手メーカーによる現地法人の設立や工場進出が主流でした。しかし、近年では中小企業やスタートアップによる海外進出が増加し、その方法も大きく多様化しています。その中でも注目を集めているのは、インターネットと物流の進化による越境ECなどを活用した「スモールスタート型」と呼ばれる小規模から始める進出方法なのです。
中小企業の海外進出には、人口減少による市場縮小や競合の激しい国内環境から脱して、成長が見込まれる市場の開拓を目的とするケースが多く見られます。既に海外進出している企業で、販売先や製造委託先を中国に依存している場合、地政学リスクを回避するために東南アジアに進出するといったケースも増えています。その一歩として、現地に拠点を構えず、リスクを抑えてビジネスを始めるスモールスタートでの手法が選ばれているのです。
海外進出の方法
越境EC
越境ECとは、自国以外の海外市場に向けて、インターネットを介した商品やサービスを販売する手法です。中小企業にとっては、現地法人や店舗を持たずに海外展開できるのでう、手軽な手段として注目されています。AmazonやShopeeなどの海外プラットフォームを活用することで、販路の確保や決済・物流の仕組みも比較的容易に整えることが可能です。ただし、言語対応や現地の商習慣、関税・規制への理解は欠かせません。成功の鍵は、需要のある市場を見極め、ローカライズされた情報発信と丁寧なカスタマーサポートを行うことにあります。低コストかつスモールスタートで始められる点が魅力で、初めて海外進出を目指す企業にも適した方法といえるでしょう。
海外販売代理店
海外販売代理店とは、自社の商品やサービスを海外市場で販売してもらうために、現地の企業や個人に販売を委託する方法です。自社が直接現地に拠点を持たなくても販路を確保できるため、初期コストやリスクを抑えながら海外進出が可能になります。現地の商習慣や市場動向に詳しい代理店を活用することで、顧客対応や販促活動をスムーズに進められる点が大きなメリットです。ただし、代理店との契約条件や報酬体系、販売エリアの取り決めなどを明確にしておかないと、後々トラブルになる可能性もあります。自社の商品に合った販売ネットワークを持ち、信頼できるパートナーを見極めることが重要です。
展示会・見本市への出展
展示会・見本市への出展は、海外市場への足がかりとして非常に有効な手段です。現地バイヤーやパートナー企業、消費者と直接接点を持つことで、自社製品やサービスへの反応をリアルに把握できます。市場ニーズの見極めやブランド認知の向上に加え、商談の獲得や販売代理店の発掘にもつながるため、販路開拓の第一歩として活用されることが多くあります。また、同業他社の動向や競合製品を一度に把握できる機会でもあり、市場理解を深める上でも価値があります。しかし、出展には費用や準備期間が必要となるため、事前に目的やターゲット市場を明確にし、成果につながる戦略的な活用が求められます。展示会は単なる紹介の場ではなく、海外展開の可能性を試す貴重な実地調査の場といえるでしょう。
海外OEM
海外OEMとは、自社ブランド商品を海外の製造業者に委託して生産する手法です。コスト削減や生産キャパシティの確保を目的に、多くの中小企業が活用しています。海外OEMを活用することで、自社で生産設備を持たずとも現地市場向けの商品展開が可能になり、スピーディーな市場参入が実現します。また、現地での製造により、物流コストの削減や関税の回避といったメリットも期待できます。一方で、品質管理や納期の調整、知的財産の保護などの課題もあるため、信頼できるパートナーの選定が重要です。製造業にとっては特に有効な海外進出手段であり、製品供給体制を現地に構築することで、より持続可能な事業展開が可能になります。
事例
海外進出支援事例①
東南アジアでの自社製品展開を希望されていたクライアントは、初めての海外展開をどのように進めたら良いかわからないという状況でした。当初は市場調査のご相談でしたが、ニッチな製品を扱っているため、そこに予算をかけるよりも、テスト販売などを通じて市場の声を拾う方が良いとアドバイスを行いました。その後検討を重ねた結果、WEBサイトを立ち上げて越境ECから取り組むという方法を選ぶことになりました。
このように、ニッチな製品の場合は、越境ECを通じて市場の反応を見たり、現地パートナーを介してポップアップストアを開設したりすることが有効な場合もあります。また、越境ECは国ごとに規制が頻繁に変わるため、常に最新の規制動向を把握することが重要となります。
海外進出支援事例②
中国などで美容製品を展開しているクライアントから、インドネシア進出についてご相談いただきました。中国などではドラッグストアでの販売をメインとしていましたが、インドネシアでは市場特性を踏まえて、ライブコマースでの販売に特化する戦略を提言しました。クライアントとなる企業はインドネシアとの貿易経験がなかったため、輸入・国内物流・ライブコマースを担える代理店候補をリストアップし、その後の面談セッティングや交渉のサポートも行いました。
クライアントの製品が、インドネシアにおいては高価格帯であったため、取り扱える代理店の選択肢が多くはありませんでした。さらに、高価格帯の製品は、その性質に合わせたストーリーや消費者の購買行動を引き起こすブランディングが重要になります。それらを解決する販売手段としてライブコマースを選択し、結果的に低リスク低コストでの進出を実現できました。
海外進出支援事例③
チャイナプラスワンとして、ベトナムとインドネシアのOEMメーカーへの変更を検討していたクライアントは、OEM候補先のリストを作成したものの、面談まで至らないという悩みを抱えていました。インドネシアやベトナムを始めとする東南アジア諸国では、現地言語でないと入手できない情報が多くあります。
そこで、当社は現地に根ざしたネットワークや、現地企業向けに公開されている企業データベースなどを活用し、ベトナム、インドネシアでの同様の小型家電、また、類似した製品を製造するメーカーを様々なデータベースを元にリストアップし ました。OEM能力の有無、日本企業との取引実績、その他会社業績等についてヒアリングを行い、選定した企業へ現地言語でアプローチを行った結果、高いアポイント獲得率を実現することができました。
まとめ
海外進出を成功させるために重要なことは、自社のリソースや目的、進出先の市場特性に応じて、最も適した手段を選択することです。特に、中小企業は、大手企業のように市場調査から戦略策定、実行までを包括的に進める余裕がないことが少なくありません。TSIは、そのような限られた予算の中でも、特に実行フェーズにリソースを割くことで、費用対効果の高い進出支援を実現しています。海外進出を成功に導くには、“小さく始めて、大きく育てる”というスモールスタートの考え方と、戦略的な行動力の両立が欠かせません。今こそ、自社の強みを活かしながら、世界に挑む一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。海外進出をご検討されている方は、お気軽にご相談ください。