海外市場への進出は、多くの企業にとって大きなチャンスとなります。しかし、いざ動き出そうとすると、「現地でどう売るか?」「信頼できるパートナーはどう見つけるか?」といった疑問や不安がつきものです。そのようなとき頼りになるのが、現地に精通した代理店の存在です。この記事では、海外進出における代理店選びのポイントや交渉時の注意点をご紹介します。
代理店の探し方
代理店探しの流れ
海外代理店の選定は、まずは探索基準に合ったターゲットとなる企業のリスト作成から始まります。必要に応じて、企業の詳細情報を調査し、候補を絞り込みます。その後、対象企業に問い合わせを行い、初回の面談へと進めます。現地訪問も兼ねて何度か面談を重ね、双方の理解を深めていきます。最終的に、契約内容の交渉を行い、合意に至れば契約書を締結することになります。

代理店の探し方
海外の代理店探しの基本となるのが、インターネット検索で各種サービスの候補となる代理店を見つけて直接アプローチするという方法です。他には、業界関連の展示会や見本市へ参加するという方法もあり、代理店と直に話をすることで、対応力を確認できるという大きなメリットがあります。
しかし、多くの代理店は現地語のみのウェブサイトしか持たず、それどころかウェブサイト自体がないケースもあるため、候補となる代理店を見つけにくいという現状にあります。また、問い合わせをしても返信がなかったり、たとえ連絡が取れたとしても、言語の壁や商習慣の違いによって交渉がスムーズに進まなかったりというケースもしばしば見られます。展示会についても同様で、物理的な距離からハードルが高いため、現地事情に詳しく、言語対応もできる仲介者に紹介してもらうというルートが、海外での代理店を見つける近道と言えます。
代理店選び
代理店選びのポイント
代理店を探す上で、海外企業との取引経験に慣れているかどうか、また、自社が狙う顧客層に対して既に商流を持っているか、つまり販売チャネルやネットワークがあるかどうかは、事前に確認しておきたい重要なポイントです。お互いに手探りの状態で進めてしまうと、目の前のビジネスチャンスを逃してしまうことにもなりかねません。加えて、頻繁にコミュニケーションが取れるかどうかも、契約前の段階で見極めておくべきでしょう。
代理店との契約では、交渉時に取り交わした内容が契約書に正確に反映されているか確認する必要があります。自社に不利な条項が含まれていたり、逆に記載すべき内容が抜けたりしないよう、専門家の助言も仰ぎながら慎重にチェックすることが大切です。
代理店選びの決め手
海外代理店の選定で多くの企業が重視するのは、要望に柔軟に応じてくれる対応力、日本企業との豊富な取引経験、取り扱い商材の取引実績、そして日本語での対応が可能かどうかといったポイントです。単なる条件の一致ではなく、「相性の良さ」や「実績の信頼性」により重きが置かれています。実際に、これらのポイントを抑えておくと、現地とのコミュニケーションや業務の進行が格段に円滑になるため、長期的なパートナーシップへとつながりやすいのです。
そして、将来的にどの程度の取引ボリュームが見込めるかといったビジネス面での期待値も、代理店を選定する上で重要な判断材料となります。たとえば、過去に同じ商材をどの程度販売してきたか、既存の取引先との関係性、販路の広がり方などをチェックすることで、将来的な販売量の期待値をある程度見積もることができます。これらを総合的に見て、最も信頼できるパートナーを選定することで、ビジネスを成功に近づけることができます。
交渉時のポイント
交渉時に留意すべきポイント
海外の代理店と交渉する際に苦労する点として、最も大きいのは国や地域によって異なる商習慣です。日本とは交渉スタイルが大きく異なる国もあり、交渉が思うように進まないことがあります。たとえば初めに強気な条件を出すことが一般的な国では、最初から希望条件を提示してしまわない方がよいでしょう。意図せず不利な条件で合意してしまうことがないよう、相手の文化や交渉慣習を理解し、ある程度戦略的に条件を提示する戦略が必要です。
そして、事前交渉で特に見落とされがちなのが、顧客向けのアフターサポート体制についてです。代理店にアフターサービスまで担ってもらうとなると、現地側の負担が大きくなり、合意に至らないこともあります。そのため、サポート体制をどう構築するか、どこまでを代理店に任せ、どこから自社で対応するかといった役割分担を明確にし、事前に期待値をすり合わせておくことで、トラブルを未然に防ぐことができます。
交渉をスムーズに進めるためのポイント
前述のように、海外の代理店との交渉を円滑に進めるためには、相手国の商習慣や文化を理解することが第一歩となります。交渉の形式やタイミング、言葉遣いなどにも配慮が必要です。信頼関係の構築も交渉の成否を大きく左右するため、できるだけ早い段階で対面での打ち合わせを実施するべきでしょう。顔を合わせてコミュニケーションを取ることで、相互理解を深めやすくなり、そうした丁寧な関係づくりが、交渉全体をスムーズに進める鍵となるのです。
しかし、どんなに準備を整えたとしても、全て希望通りに進むことがないのが常です。事前に「譲ってもよい条件」と「絶対に譲れない条件」を明確に整理しておくことで、柔軟かつ戦略的に対応でき、お互いに納得のいく契約内容に近づけることが可能になります。
事例
代理店探しサポート事例①
クライアントは、既にアメリカ・中国・オーストラリアで海外事業を展開しており、新たに大きな成長が見込まれるインド市場への進出を計画していました。独自に市場調査を行い、顧客や代理店の候補となり得る業種の特定は済んでいたものの、現地に土地勘がないことから、具体的な企業のリストアップやアプローチには苦戦している状況でした。また、インドで開催される展示会に参加して、現地パートナーを開拓するための事前アポイントも希望されていました。
当社では、市場調査およびアプローチ先からのフィードバックを踏まえ、最初に想定していた業種以外にもターゲットを拡大し、展示会参加に向けた事前のアポ取りを実施。加えて、展示会当日には現地スタッフが同行し、対面での商談や交渉のサポートも行いました。交渉を円滑に進めるために、必要な情報の整理や現地競合製品の価格調査なども事前に済ませておいたのです。その甲斐もあって、進捗状況に応じて契約内容の更新にも柔軟に対応し、現地展開を総合的にサポートすることができました。
代理店探しサポート事例②
中国、台湾、香港にて美容製品を展開しているクライアントより、インドネシア進出の相談をいただきました。現地語となるインドネシア語はおろか、英語での対応さえも難しいとのことで、言葉の面が大きなハードルとなっていました。中国や台湾、香港では主にドラッグストアでの販売が中心でしたが、インドネシア市場の特性を踏まえ、ライブコマースに特化した販売戦略を提案しました。また、クライアントはこれまでインドネシアとの貿易経験がなかったため、輸入・国内物流・ライブコマース運営まで一貫して対応できる代理店候補をリストアップしました。その中から、優先度の高い10社をクライアントと協議の上で選定し、弊社が対象企業へのコンタクトおよび面談調整、交渉支援までを一貫して担いました。競合製品の調査結果も踏まえ、具体的な参入戦略の立案も行っています。
特に、本件では、クライアント製品がインドネシア市場では高価格帯に分類されるため、そうした製品を扱う販売力のある代理店を見極めることが成功の鍵を握りました。また、高価格帯製品を消費者に選んでもらうためには、消費者が買いたくなる「理由」を用意することが重要となってきます。その観点から、製品の背景にあるストーリーやサステナビリティなど、購買動機につながるブランディングの工夫が求められ、それに応えた事例です。
代理店探しを依頼する前に準備しておくこと
海外の代理店探しをアウトソーシングする際に、スムーズに進めるためのポイントはいくつかあります。まず1つ目は、希望するスケジュールの明確化です。通常、契約締結までは半年程度を要するため、余裕を持ったタイムライン設計が必要です。2つ目は、対象とする国の選定です。もちろん、進出国の選定からの相談も可能ですが、特定の国が決まっていれば初動が早められ、効率的に進められます。3つ目は、希望する販売形態を明確にしておくことです。卸売、直販、EC、ライブコマースなど、販売方法によって適切な代理店のタイプが異なるため、事前にイメージを固めておくとスピーディーに進めることができます。
まとめ
海外販路開拓において、代理店の活用は効果的な手段です。ただし、代理店の選定から交渉、関係構築までを戦略的に行わないと、かえってリスク要因にもなりかねません。ティーエスアイが提供する海外代理店探しサービスは、現地ネットワークを活用した高いアポイント獲得率を強みとしており、現地商習慣に合わせた交渉サポートを行います。海外の代理店をお探しの方は、お気軽にお問い合わせください。