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東南アジア市場を解明!成長の秘密とビジネスチャンス!

海外進出
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現在、多くの日本企業が国内市場の行き詰まりと人口減少に直面し、新たな成長機会を求めて海を越えています。特に経済成長が続く東南アジアは、その絶大な成長ポテンシャルとビジネスチャンスによって世界中の企業や投資家の注目を集めています。海外進出は企業にとって大きなチャンスをもたらす一方で、成功を収めるためにはターゲットとする国の深い市場理解が必須です。

この記事では、東南アジア市場のポテンシャルを掘り下げ、そこに存在するビジネスチャンスを明らかにし、人口の推移や産業変革の視点から今後の経済動向を解説します。

東南アジア市場の魅力

海外進出を目指す企業が進出先を決定するためには、より多くのメリット、つまり安心材料が必要となります。現在、進出先として注目されている東南アジア市場にはどんな魅力があるのか、その背景とともにご紹介します。

人口とGDP

ASEANといわれる東南アジア諸国連合は、ベトナム・インドネシア・シンガポール・タイ・フィリピン・マレーシア・ブルネイ・ミャンマー・ラオス・カンボジアの10ヶ国によって形成されています。この地域は2022年時点で約6億7945万人の人口を抱えており、世界人口の8.6%に当たります。人口構造を見てみると、高齢者が多く若者が少ない「つぼ型」をした人口ピラミッドである日本に比べ、若年層が多い理想的な人口ピラミッドに近い形をしています。

人口が多く、平均年齢が若いため、豊富な労働力が確保でき、現地での人件費を抑えることができます。さらに、若年層が多いと医療・年金等の社会福祉の負担が低くなることなどから経済政策へ予算が向けられやすくなり、経済が活性化される傾向が強くなります。経済成長はGDPの増加、ひいては中流階級の増加に繋がるため、消費市場のポテンシャルも非常に高くなります。

東南アジアの人口とGDPは増加を続け、2030年にかけて堅調な経済成長が続く見込みです。ASEANの経済成長率は年平均約5%と世界平均を上回るペースで推移しているため、急速な市場拡大に伴い、さらなるビジネスチャンスが広がっています。

豊かな天然資源

東南アジア地域はその豊かな天然資源が世界的にも知られ、石油・天然ガス・石炭・金属鉱物(銅・金・ニッケルなど)、および木材といった多様な資源を豊富に有しています。例えば、インドネシアとマレーシアは世界最大のパーム油生産国で世界のパーム油供給の大部分を占めており、ベトナムはコーヒーの生産国世界第2位、タイは天然ゴムの最大の輸出国の一つとなっているなど、天然資源は地域経済の重要な柱となっています。

このように多種多様で豊富な天然資源によって、原材料を安定的かつ低コストで確保することが可能になります。さらに、原材料を現地で直接調達することで輸送、輸入のコストや中間業者のマージンも削減できます。製品の生産コストを下げると競争力を高めることができるため、天然資源が豊富であることは、進出を考慮する上で大きなメリットとなります。

チャイナプラスワンとしての経済発展

「チャイナプラスワン」とは、企業が事業拠点を中国に過度に集中させることによるリスクを回避するために中国以外の国や地域に生産拠点などを分散させ、中国事業を維持、成長させつつ全社としてのリスクを軽減する経営戦略です。

東南アジアはこの戦略において中心的な役割を果たしており、その効果もあって、経済の発展が進んでいます。以下では、チャイナプラスワンとして東南アジア地域が選ばれる代表的な3つのポイントをご紹介します。

ポイント1:労働力コスト

中国の労働力コストの上昇に伴い、多くの企業がコスト削減を目的として東南アジアへの移転を進めています。人口が多く、働き者の若者が多い東南アジアでは人件費を抑えることが可能で、特にベトナム、インドネシア、タイなどは、比較的低コストで豊富な労働力を確保することができるため、多国籍企業にとって魅力的です。

ポイント2:地理的利点

東南アジアは世界の主要航路上に位置しており、中国・インド・オーストラリア・中東へのアクセスが容易です。これまで中国は「世界の工場」としての地位を確立してきたため、中国外に生産移管をする場合でも、原材料や部品は中国に依存する傾向にあります。そのような中、ベトナムは中国と隣接していることから陸路での輸送が可能である点が注目され、その優位な地理的利点からチャイナプラスワンの筆頭格となっています。

ポイント3:輸出環境

 ASEANを中心に経済統合が進んでおり、自由貿易協定(FTA)の拡大や共通市場の形成が進んでいます。地域内でのビジネス環境を改善することで、外国直接投資(FDI)も促進しています。

また、多くの東南アジア諸国は、外国投資を惹きつけるために税制優遇措置や投資補助金を提供しているため、これらの政策は特にチャイナプラスワン戦略の実施を後押ししています。

東南アジア市場の変化

経済成長や世界のトレンドなどに伴い、市場も変化しています。市場の変化は、企業が市場の選定をする際に重要な鍵を握ります。大きく経済成長を遂げている東南アジアの市場は、どのような変化が起こっているのでしょうか。

輸出・輸入の変化

東南アジアの貿易総額を貿易相手国ごとに見ると、2010年から2020年にかけて東南アジア内や日本が縮小している一方で、米国や中国の存在感が大きくなりました。貿易総額は、2010年の2兆39億1,900万ドルから、2020年に2兆7,124億1,800万ドルへと10年間で35.4%拡大しました。規模としては、日本の貿易総額の約2.1倍、中国の約6割、米国の約7割です。世界の貿易総額に占める東南アジアASEANのシェアは2010年代を通じて6.5%から8.1%へと増加し、EU(29.4%)には及ばないものの、中国(12.4%)や米国(10.7%)と肩を並べるほどです。

東南アジアは豊富な天然資源から第一次産業が中心でしたが、第二次世界大戦後にモノカルチャー農業国からの脱却を目指し、工業化を推進して経済成長を進めていきました。この工業発展の結果、輸出品も変化を遂げており、機械・電気機器が輸出品目の4割(2021年度)を占めるようになりました。輸入品に関しても、機械・電気機器が約4割を占めており工業中心の貿易になっていることがわかります。

また、輸出入の品目で機械・電気機器の同一の品目が多くを占めていることは、輸入した製品の加工、組み立てを行って輸出するなどの製造業ベースでの市場や世界とのアクセスの良さから、通過点として輸入したものをそのまま輸出する「物流のハブ」の役割を担っていることも考えられます。

サプライチェーンの重要性増加

グローバル化、チャイナプラスワンの動き、近年のパンデミックによる供給混乱の影響を受け、原材料の調達から生産・加工・流通・販売により消費者に提供されるまでの一連である「サプライチェーン」の重要性が高まってきました。特にコロナ禍で見えた中国への一極集中リスク、および米中の関係悪化は「脱中国」と東南アジア移行の動きを一層加速させました。

前述にもあるように、東南アジアは人口の多さ、そしてそれに伴う豊富な労働力、世界各国とのアクセス良好な地理により、サプライチェーンの中核を担うのは自然のことでしょう。さらに、所得中間層の人口も多くなっていることから、今後は消費市場としての拡大も期待できます。

加速するデジタル市場

近年、東南アジアでは急速にデジタル市場が拡大しています。その要因としてまず考えられるのは、人口構成の中で若年層が多いことです。若年層はスマートフォンやインターネットが日常に根付いており、デジタル技術に寛容的です。スマートフォンのユーザー数は2022年に3億2,630万人に達しており、2026年まで増えていく見込みですが、既にインターネットユーザーの10人に9人はスマートフォンを利用している状況です。若い世代がデジタルコンテンツを消費し、オンラインサービスを利用することが多いため、デジタル市場の拡大を促進していると考えられます。

昨今のパンデミックも、デジタル市場拡大の大きな要因となりました。接触を避けて多くの消費者がオンラインショッピングを利用し始めたことがきっかけとなり、eコマースが拡大し、この傾向はパンデミック後も続いています。また、銀行口座を持たない人々でもアクセスできるモバイルウォレットや、オンライン決済プラットフォームの登場によってオンラインでの取引が容易になり、デジタル決済も普及しました。このように、eコマースの利便性と、銀行口座を持たない人々もアクセスできるデジタル決済オプションの提供が消費者のオンラインでの支出を増やし、更なるデジタル市場の加速を促しているのです。

現在、多くの東南アジア諸国政府がデジタル経済推進に力を入れており、デジタルスキル向上、起業家精神の促進、デジタルインフラの整備といった政策を積極的に実施することで、市場の成長を後押ししています。業種を問わず、あらゆる経済領域を発展させることが将来的な成功に繋がり、経済拡大、技術革新、生活向上を実現する大きなチャンスと期待されています。

東南アジア今後の経済動向

東南アジアの経済は地域全体の人口増加、急速な都市化そして中間所得層の拡大に支えられていますが、成長を続ける分、変化も激しくなっています。現状から今後の動きを予想することで、新たなビジネスチャンスを掴めるかもしれません。

人口推移

現在、アジアでは人口が減少し、少子高齢化が進んでいます。人口トップに入る中国でさえ、2020年に実施された第7次人口センサス(全数調査)では、合計特殊出生率は1.30と日本の1.33を下回る結果になっており、高齢化が加速すると言われています。他にも台湾、韓国も同様に高齢化が始まっています。このように北東アジアでは高齢化、人口減少が始まっているのに対し、東南アジア地域は2050年まで人口が増加し続けると予測されています。

しかし、そんな東南アジアでも、出生率が低下してきているということは注意しておくべきポイントです。東南アジア内でも少子高齢化のスピードには差があり、特にシンガポールとタイは抜きんでています。ベトナムも人口が増えているにもかかわらず出生率は下降気味、高齢者の割合も徐々に高くなっています。

こうした現象は、経済成長に伴って生活様式が変化することや、生活水準が上がり、医療体制が変化することで平均寿命が伸びることや、都市化によって子供を持つ経済負担が大きくなること、さらに女性のキャリア形成もしやすくなるため結婚や出産が後回しになることなどが要因として考えられます。日本以上の急激な高齢化に対応するため、政策・制度の整備はもちろん、サービスを充実させていくことが課題となっています。

産業変革(EV、半導体)

環境問題が大きく取り上げられ、「脱炭素」をモットーに自動車産業がEV(電気自動車)へのシフトを急速に進めています。デジタル産業の拡大に従い、半導体の需要も増える一方です。東南アジアはこの産業変革の波に乗り、特にEV(電気自動車)と半導体産業において重要な役割を担い始めています。

EV産業

東南アジアは世界的なEV市場成長に伴い、EV製造の新たな拠点として注目されています。中でも特に動きが活発なのがタイとインドネシアです。

タイは元々ASEANの自動車大国でした。そのため販路の確保、自動車製造に欠かせない部品などの積み上げたものが多くあります。政府もEV生産促進を目指す政策を打ち出しており、多くの自動車メーカーが製造基地を設けています。

そんなタイの競合国がインドネシアです。インドネシアは世界最大級のニッケル生産国であり、EVバッテリーに重要な原料を供給することでEV産業の重要な一角を担っています。さらにインドネシアでの自動車生産もタイに匹敵するほど増加しており、EV比率は2025年に20%まで引き上げることを目指しています。インドネシアのニッケルバッテリーに対して、タイでは豊富に取れる亜鉛からバッテリーを開発する動きもあります。

この2カ国以外にも、鉱物資源埋蔵量の多いフィリピンで、EVに力を入れるべく米国企業や中国企業を巻き込んだ動きを見せています。

半導体

デジタル産業において、半導体は現代の電子デバイスに不可欠なものであり、その需要は今後も増加すると予測されています。中でもマレーシアとベトナムの動きが目立っています。マレーシアは電気・電子産業の競争力が高く、2021年時点で世界第6位の半導体輸出国です。タイにおける自動車産業のように、50年間以上にわたり構築された包括的な電気電子産業の蓄積が非常に大きいのです。

半導体には前工程と後工程がありますが、ペナン州には300社以上の多国籍企業が存在し、前工程から後工程までの生産を担っています。これは半導体バリューチェーンのいずれの部分においても、マレーシア国内で供給が可能だということを意味します。また学力や技術力の面で優秀な人材プールがあることも大きな強みです。

ベトナムでも電子産業の育成・発展を目指しており、電子産業が輸出の3割程度を占めています。現在ベトナムでは、主に組み立て、テスト、パッケージング領域に特化しており、世界における半導体産業の後工程で重要な役割を担っています。外資企業への依存も大きいため、自国企業の成長を課題として持っていますが、ベトナムは半導体製造に不可欠であるレアアース埋蔵量が世界第2位であり、今後も半導体市場は成長すると予想されています。

まとめ

人口の多さ、豊富な天然資源、そして「チャイナプラスワン」としての経済発展が東南アジアを魅力的な地域として位置づけています。そして輸出・輸入の変化、サプライチェーンの重要性の増大、そしてデジタル市場の加速は、この地域の市場動向を理解する上で重要なポイントです。

現在、東南アジアの経済は人口動態の変化や産業の進化によって新たな段階に入っています。特に、EV(電気自動車)と半導体産業における重要な役割は、地域経済の多様化と持続可能な成長を促進しています。ただし、少子高齢化の進行など、新たな課題も浮上していますので、注意しておく必要もあります。

今後、東南アジア市場に進出する企業には東南アジア特有のメリットと課題を分析し、柔軟かつ戦略的なアプローチが求められます。デジタル化の推進、環境に配慮したビジネスモデルの構築、そして東南アジア内での持続可能な開発への貢献は、ダイナミズムと潜在力に満ちた東南アジア市場での成功の鍵を握るでしょう。

東南アジア進出ならティーエスアイ

比較的安価なコストで豊富な労働力と市場にアプローチでき、新日国も多い東南アジアは、今後も日本企業にとって魅力的な進出先となるでしょう。ただし、ひとことで東南アジアと言ってもその国民性やビジネス風土、規制は国によって大きく異なります。失敗のない海外進出を目指すなら、各国の特徴や注意点、制度などに詳しい専門家に相談することが近道だといえます。

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