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【東部】世界人口ランキング1位のインドを地域別に解説!

インド
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世界人口ランキングにおいて長らく1位であった中国を抜いて、2023年、インドが約14億2,862万人でトップとなりました。インドには29の州と7つの連邦直轄領があり、大きく東西南北の地域に分かれます。進出を成功に収めるためには、各地域の独自性と特徴、それらが及ぼす影響を深く掘り下げることが重要です。

この記事では、東部インドの人口統計や経済動向、産業構造を解説し、この地域が国際的にどんな役割を果たしているかを明らかにしていきます。

インド東部の概要

主要都市であるコルカタを含むインド東部は、自然環境と肥沃な土地に恵まれていますが、インド国内でも開発や発展がとりわけスローであるエリアとして知られています。以下では、そんなインド東部の人口・GDPなどの概要についてご紹介します。

人口・面積・GDP

インド東部は西ベンガル州、ビハール州、オリッサ州、バングラデシュを挟んで北東に位置するシッキム州などを入れて12の州に分けられます。この12州における総人口は、約3億人、面積は68万㎢と、面積・人口ともに北部に次ぐ大きさの地域となっています。

インド東部のGDPはインド国内の平均を下回る州が多く、貧困州が多いとされています。国全体に占めるGDPの割合も他の地域と比べて低く、農業への依存度が高いことが原因のひとつとして考えられています。

インドにおける経済的地位

インド東部の州政府が産業の工業化において消極的だったこと、インフラ整備がなかなか進まないこともあり、他地域に比べ東部の経済発展は遅れています。特に北東部は、政治が不安定であること、山岳地帯が多くインド主要都市部へのアクセスが悪いことから、経済的な後発州が多くなっています。近年では、東アジアとの経済連携強化を目指すインド政府からの開発支援が集中的に行われ、東インドに東西北の三方が囲まれたバングラデシュとの連結性を改善・強化する動きが注目されています。この動きにの一連で日本からの支援もあり、支援道路や鉄道などハード面でのインフラ整備が徐々に進んでいます。

インド東部の産業構造

インド東部は主に農業が経済の柱となっていますが、鉱物資源が豊富な地域でもあり、鉄鋼業が盛んです。また、コルカタを含む主要都市では、商業活動が活発で文化的にも重要な地位を占めており、地域の成長を促進しています。以下では主要都市と産業についてご紹介します。

中心都市

インド東部の中心都市として、西ベンガル州の州都であるコルカタがまず最初に挙げられます。他にも、ジャルカンド州最大の鉄工所を擁する工業都市、ジャムシェードプルがあります。また、西ベンガル州有数の避暑地ダージリンは、言わずと知れた紅茶の名産地でもあることから、世界各国から観光客が訪れます。現地には多くの宿泊施設が立ち並びます。

コルカタ

英領インド時代の首都であったコルカタは、インド独立後、後背地がパキスタン(現在のバングラデシュ)として分離した影響で、政治的・経済的に他の都市圏から差をつけられました。しかし、現在でも4大都市の1つであることに変わりはなく、インド東部の中心地となっています。商業・文化が盛んであり、都市化につれて教育も進んだことで大学機関も充実しています。

英領インド時代は、インド最大の産業都市であった歴史を持つため、広範囲にわたる道路網と有数の鉄道網を維持しています。また、複数のインド産業複合企業の本社が置かれ、その一つがタバコ等の消費財(FMCG)、ホテル、板紙・製紙・梱包、農業の4つの事業部門で構成されるITC Limitedホールディングスです。同社はメイン事業のタバコ産業において、単独でインド国内の販売シェア80%を占めており、さらなる成長が注目されています。

インド国内で3番目に人口過密の高い都市であるコルカタでは、都市化に伴い車を持つ人が急増しています。しかし、公共交通インフラの整備が進まず、交通渋滞が社会問題化してきました。そのため、政府は日系企業とも連携し、地下鉄の整備を促進することで、交通渋滞の緩和、そして産業競争力の強化を図っています。

農業

地域によって気候も多様なインドは、東部だけでも州ごとに気候が異なるため、その土地に合った作物が栽培されています。

年間の降水量が多い西ベンガル州は、コメと野菜の主要産地となっています。麻袋などに使われるジュートは、インドが世界生産量の60%を占めていますが、そのほとんどが西ベンガル州で生産されています。ビハール州はライチとマカナの最大の生産地です。人口1億人の大農業地帯であり、人口の約86%が農業で生計を立てています。北東の州には、焼畑農業が伝統的に行われる地域が多くあります。政府は北東地域の開発に注力しており、生産性を上げるためにも定着農業への転換を推奨しています。

インド東部の主要産業となる農業ですが、所得は非農家の1/3ほどでしかなく、「低所得」が課題とされています。所得が上がらないことにより、機械化や環境にやさしい新肥料といった新たな技術や製品に投資することができず、産業の近代化が進められないのです。そのため政府は、農業補助金等の投資や販売システムを改善することにより、農業の発展を推進しています。

鉱物資源

インドは鉄鋼埋蔵量が世界で5番目に多く、インド東部も各州が鉱物資源に恵まれています。鉱山や鉱物産出の主要な州としては、ジャルカンド州・オリッサ州・西ベンガル州が挙げられます。

ジャルカンド州のジャムシェードプルには、世界でも有数の大手鉄鋼メーカー「タタ・スチール」が運営する、国内で最も古く、最大の製鉄所の1つがあり、主要な工業都市を築いています。アルミニウムやステンレス鋼の生産がインド内で最大であるオリッサ州では、豊富な鉱物資源に着目して投資が活発化しており、ビジネスチャンスが広がっています。西ベンガル州はインド内で3番目に鉱物生産量が多く、鉱床が州全体に分布しています。東部では、豊富な鉱物資源が入手しやすいことから、地場産業や外資企業からの投資を後押しすることになり、事業進出機会が拡大しています。

インド東部に進出する日系企業

インド東部に進出している日系企業は、他地域と比べてもそう多くはありません。2022年10月時点で日系企業の拠点数は、西ベンガル州の200社超が最多となります。次に約70拠点あるビハール州、そして65拠点あるジャールカンド州とオディシャ州が続きます。

西ベンガル州で積極的に活動している日系企業は、テラモーターズやエア・ウォーター・インディア、富士ソフト、川崎陸送が挙げられます。西ベンガル州で電動のオートリキシャ(乗合タクシー)の販売実績を伸ばしてきたテラモーターズは、低所得層の購入者を対象に、ファイナンス事業を新たに手掛け、さらに事業拡大を進めています。

オディシャ州では、州政府のイベントを通じて、日系企業による事業拡大の一環とした同州への投資状況を明らかにしています。東京窯業は5億ルピー(約8億2,400万円)を投じて工場の設置を計画しており、富士ソフトは研修センターを立ち上げる見通しとなっています。さらに、富士ソフトは「インダストリー4.0」に関連するサービスを提供しており、州政府のIT部門と連携していく方針です。また、日清もインド・ニッシン・フーズとしてオディシャ州で事業を展開しており、同州クルダで最大の工場をさらに拡張することを検討しています。

まとめ

インド東部は、豊かな自然環境と豊富な資源に恵まれているとともに、地理的な位置が国際貿易において有利であることが注目されており、特に東アジアとの連携強化が期待されています。経済的な遅れが指摘されがちですが、政府の積極的な開発支援とインフラ整備の進展により、地域全体の産業と投資の機会は拡大しています。地域の特性を深く理解し、ニーズに応じたアプローチを取り入れることで、インド東部は企業にとって有望な進出先となり得るでしょう。

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