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スタートアップ大国インド|注目を集める4つの市場とは?

インド
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現在、目覚ましい経済発展が続く東南アジア。中でもインドでは、ここ数年でスタートアップ市場が急速な成長を示しています。2022年にはスタートアップ・エコシステムとユニコーン数で世界第3位となったことで、有望な投資先として世界中から注目が集まるようになり、ますます盛り上がりを見せています。

本記事では、スタートアップ大国とも呼べる同国で、今後の成長が期待される4つの市場についてご紹介します。

インドのスタートアップ市場概要

現在インドは、アメリカ、中国に次ぐ世界第3位のスタートアップ市場として注目され、世界中の投資資金が集まっています。以下では、インドのスタートアップ市場について解説します。

インドが投資有望国に選ばれた理由

2023年に国際協力銀行が行なった調査「投資有望国・地域ランキング」では、インドが2年連続で1位を獲得しました。回答企業の約半数がインドに投票し、得票率の高さは前年を上回る結果となりました。さらに、インドを有望国と回答した企業のうち、実際に事業計画があると答えた企業数が大きく上昇しているため、今後日系企業の拠点数が増加する可能性があります。

インドを投資有望国に選んだ理由として、84.2%が「インド市場の成長性」を挙げています。「人口ボーナス期」にあるインドでは経済成長が見込まれており、国際通貨基金によると、インドのGDPは2025年に日本を抜き、世界4位となると推計されています。そのため、インド市場は日本だけではなく、世界中から投資先として注目されています。

インドのスタートアップ市場

インドのスタートアップ企業の登録数は、2014年は約400社程度だったのが、2022年には8万社以上にまで増加しました。スタートアップの資金調達額は、パンデミックによりデジタル化が進んだことを背景に、2021年は420億ドルが投資され、44社のユニコーン企業が誕生しました。しかし、その後はやや減少傾向となり、2023年のインドのスタートアップの資金調達額は83億ドル、ユニコーン企業は2社に留まりました。

インド財務省は2024年度の国家予算案において、エンジェル税の廃止などを発表しました。この措置は、インドのスタートアップエコシステムをより強化し、起業家精神を普及させ、イノベーションを促進するものとされています。また、雇用分野においても、スタートアップ企業や中小企業に対する財政支援や税制優遇などについて言及されました。このような政府からの後押しを受け、今後もインドのスタートアップ市場の成長は続くと考えられます。

インドのスタートアップ市場が拡大する理由

インドのスタートアップ市場が拡大する理由は、大きく分けて3つあります。まず1つ目は、優秀な若い人材が多いことが挙げられます。インド若年層の教育水準は高く、特にIT分野で高度な技術力があるため、革新的なビジネスアイデアが生まれやすく、テクノロジーを活用したスタートアップが次々と登場しているのです。

2つ目は政府の支援です。「スタートアップ・インディア」や「デジタル・インディア」などの政府プログラムは、起業家を支援し、ビジネス環境を整備することに重点を置いています。資金調達の支援や規制緩和、税制優遇措置などが盛り込まれ、スタートアップの成長を促進しています。

3つ目は、国内外の投資家が積極的に資金を提供しており、スタートアップの資金調達が容易になっている点が挙げられます。特に、ソフトバンクなどの大手投資家がインド市場に多額の投資を行なっているため、スタートアップの成長をより加速させています。これらの要因から、インドのスタートアップ市場のさらなる拡大が期待されています。

注目される4つの市場

インドでは多くのスタートアップが誕生していますが、その中でも特に注目されている4つのスタートアップ市場についてご紹介します。

EdTech市場

EdTechとは「Education(教育)」と「Technology(技術)」を組み合わせた造語で、テクノロジーを用いて教育を支援する仕組みやサービスを指します。オンラインコース、eラーニングプラットフォーム、教育アプリなどが含まれ、学校教育の現場から生涯学習、企業の人材育成や研修など、場所や時間を問わず学ぶことが可能になりました。

インドのEdtech市場は、今後5年間で3.7倍に成長し、投資額は2020年の28億米ドルから2025年には104億米ドルになると予測されています。学生の割合が人口の3割以上を占めるインドでは、特にパンデミック以降、オンライン教育の需要が大幅に増加しました。政府のデジタル教育推進や人口の多さが市場拡大を支え、多くのEdTechスタートアップが誕生しているのです。

FinTech市場

FinTechとは「Finance(金融)」と「Technology(技術)」を組み合わせた造語で、金融サービスとテクノロジーを結びつけることによって生まれた、新たな金融商品やサービスなどを指します。オンラインバンキング、モバイル決済、ブロックチェーンなどが含まれ、従来の金融サービスに比べて迅速かつ効率的な取引が可能となりました。

インドのFinTech市場規模は、2019年で650億米ドル、2023年には1,400億米ドルに達すると予想されています。この市場には現在、2100社以上の企業が存在し、うち67%は過去5年以内に設立されています。

インドにおけるFinTech市場の急速な成長の背景には、スマートフォンの普及率の増加やパンデミックがありますが、政府のキャッシュレス推進政策やデジタルインフラの拡充が、さらなる市場拡大を後押ししています。インドはアジアでも有数のFinTech市場とされているため、多くのスタートアップが世界的に注目されています。

eコマース市場

eコマース(電子商取引)とは、「Electric(電子)」と「 Commerce(商取引)」の略称で、「EC」とも呼ばれています。eコマースは、インターネットを通じて商品やサービスを売買する仕組みを指しており、オンラインショッピングだけでなく、デジタルマーケットプレイスや電子決済なども含まれます。

インドのeコマース市場は、若年層および中間層・富裕層の増加と、急速なインターネット・スマートフォンの普及を背景に拡大し、パンデミックによってさらに成長が加速しました。特にAmazonやFlipkartなどの大手企業が市場を牽引し、インド国内でのオンラインショッピングの利用が急増しています。都市部だけでなく地方にも広がりを見せるeコマース市場は、今後も人口増加とともに需要が増加するものとみられています。

AgriTech市場

AgriTechは、「Agriculture(農業)」と「Technology(技術)」を組み合わせた造語であり、農業領域でICT技術を活用した取り組みなどを指します。IoTやAI、ドローンを活用した製品やサービスが新たに生み出され、農業の活性化に向けて活用されています。

インドは世界有数の農業大国として知られており、国内の労働者数の半数以上が農業関連に従事する重要産業となっています。しかし、農業のGDPへの寄与は約15%にしか過ぎず、農業従事者の多くは技術や事業改善のための資金が不足しています。農業の社会的地位や収入を向上するための政策や、インフラ整備が政府によって行われてきたものの、課題は山積みとなっています。将来的な成長が期待される市場でもあり商業的にも持続可能な農業とするために、多くのスタートアップがこの問題に取り組んでいます。

まとめ

豊富な人口とデジタル化、政府からの支援を背景に著しい成長を遂げたインドですが、まだまだ課題は多く残されています。今後の成長が期待される同国経済は、引き続き外国からの投資が進むものと予想されます。今回ご紹介した4つの市場以外においても、将来的に大きく躍進する可能性が秘められています。成長分野に投資することで、ビジネスチャンスを掴むことができるでしょう。

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