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海外進出のメリット&デメリットとは? 〜初めての海外進出で知っておくべき流れと7つの手段〜

海外進出
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日本企業の海外進出は年々増加傾向で、外務省の海外進出日系企業拠点数調査2021によると日本企業の海外拠点数は77,551拠点でした。新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、前年の80,373拠点より減となりましたが、それでも過去最高水準で推移しています。地域別にみるとアジア諸国・北米・ヨーロッパの順で多く、特にアジアへの進出は全体の約7割を占めており、経済発展中のアジア諸国への関心が高まっているのがわかります。
これから海外進出を検討する企業の方向けに、海外進出するうえでのメリットやデメリット、手順や手法など知っておくべきノウハウをご紹介します。

日本企業が海外に進出する理由

日本企業が海外進出する理由は数多くありますが、大きく分ければ市場の獲得とコスト削減が大きな柱になります。
現在、日本では少子高齢化に伴う人口減少が進み、2050年には人口が1億人を切るとも予測され、市場が年々縮小傾向にあります。市場が縮小すればそれだけ売上を伸ばすことは難しくなります。また、業界が成熟していることから新規参入が難しいケースも多く、少ない顧客をめぐって競争が激化することが予想されます。
一方、世界的に見ると人口は増加しており、特にベトナムやフィリピンをはじめとする東南アジアの新興国では経済発展に伴う購買力の向上から市場拡大が見込まれます。こうした国内外の事情から、自社製品・サービスの販路拡大を目指し、海外市場に進出する企業が増えています。


また、国内では生産年齢人口の減少によって労働力確保が難しく、今後人件費が高騰する可能性があります。しかし、発展途上国で現地のスタッフを雇えば、大幅に人件費を抑えることが可能です。製造拠点を国内から国外に移すことで材料費や輸送費が安くなることもあり、コスト面で有利であることから海外に進出する企業も少なくありません。

他にも、取引先企業の海外進出に伴う進出や、税金を抑えるため、と様々な理由があります。まずは自社が海外進出する目的を明確にし、その必要性や必然性を社内で検討することが重要です。その上でどのようなメリットがあるのか、デメリットがある場合はどのように対策していくのか、ということをしっかりと検討・調査し、長期的に無理のない計画を立てていきましょう。

海外進出のメリット

(1)販路開拓

前述のとおり日本市場が縮小傾向にある一方、海外には拡大中の市場があり、特に東南アジア・アフリカの新興国は今後ますます消費需要が増加するとみられています。日本では飽和状態の業界でも海外には参入の余地が残っているケースもあり、拡大が見込まれる海外市場にリソースを集中させることで、大きな利益を上げられる可能性があります。また、すでに海外進出を果たしている企業や、国際的に展開している海外企業と取引が生まれることも期待できます。さらに、進出にあたって現地企業との提携・買収、販売委託などの手法を選択すれば、相手企業が持つ顧客や販売網を活用することで効率的に利益に結びつけることもできるでしょう。

(2)人件費・原材料費の削減

新興国に進出する場合、日本よりも原材料費が安価な傾向があるため、より多くの利益を獲得できると期待されます。原材料を輸入して国内で製造する場合と比べても輸送量などの経費を抑えることができます。また、発展途上国では最低賃金も日本と比べると低いため、人件費も安くなります。今は新興国でも賃金が上昇傾向にありますが、それでも日本よりは低く設定されていることがほとんどなので、現地でスタッフを雇うことでコスト削減につながります。低コストという理由だけで海外進出するのは危険ですが、手元に残る資金が増えることになるため大きな利点であることは間違いありません。

(3)新商品開発の可能性

海外市場や顧客に触れることで、日本では見られなかった文化や習慣、知りえなかったニーズに出会うことがあります。また、現地でのパートナーや取引先企業から得たアイデアを活用し、新たな発想で商品やサービスを開発することでシナジー効果が生まれ、国内でのビジネスに好影響を与える可能性もあります。こうした効果はすべて海外進出によるメリットと言えるでしょう。

海外進出のデメリット

(1)言語・文化・商習慣の違い

海外進出において、まず大きな障壁となるのが言語の問題です。特に、今成長が著しい東南アジアなどの非英語圏ではコミュニケーションを取るのが難しく、誤解が生じてビジネスに影響を及ぼす恐れもあります。
また、国内企業同士でなら説明しなくても認識を共有できることが、背景となる文化や商習慣が異なることによって思わぬトラブルにつながることがあります。日本では当たり前のことが相手国にとって失礼なことであったり、「ここまでやっておいてくれるだろう」と思っていたことが実はまった進んでいなかったり、ということも起こり得ます。進出先の文化や商習慣を知ることは、トラブル防止策になるだけでなく、販路拡大や市場開拓にもつながります。

(2)人材確保や雇用保持が困難

経済成長が進む新興国では最低賃金などの水準が上昇、市場の拡大に伴い雇用が活発化したりと現地での人材確保が以前より難しくなっています。また、海外の労働市場は日本に比べると流動性が高く、せっかく雇用した従業員がすぐに離職・転職してしまうケースも少なくありません。適切な人材を確保・保持するためには相手国の文化や慣習を理解し、密にコミュニケーションをとり、魅力的な賃金と労働環境を提供する必要があります。現地企業と提携する場合は、相手企業の人材管理についても把握しておきましょう。

(3)カントリーリスクがある

カントリーリスクとは、その国や地域の政治・経済・気候といった情勢が変化することで企業が受ける恐れのあるリスクの事です。国内情勢が不安定な国や治安の悪い国であれば、そのリスクは高くなります。外国企業の参入を制限する法律が制定されたり、税制面での制度が変わったりすれば大きなマイナスになりますし、万が一、紛争などが起きた場合はビジネスどころの話ではなくなってしまいます。
そこまで深刻でなくとも、海外では国内と違い、市場の状況や競合の存在、参入余地の有無、今後の成長可能性といった情報を得にくいため、ビジネス展開するうえでリスクだといえます。海外進出する際にはまず市場規模や国民の嗜好、競合の存在、業界の成長可能性など、さらには政治情勢や為替の状況も注意深くリサーチしておきましょう。このとき、現地に詳しい支援企業やパートナーがいると安心です。
「進出ありき」ではなく、自社ビジネスが参入することの効果や可能性を見極めることで、リスクを軽減することが重要です。

(4)多額の初期コストがかかる

海外進出する際には、法人設立や事務所の立ち上げ、設備費用、人材雇用など莫大な費用がかかります。現地での調査や従業員の派遣などにもコストがかかります。それだけのコストをかけても、実際のビジネスが成功する保証はありません。もちろん、事業展開するからには利益を上げることが大きな目的ですが、たとえ撤退を余儀なくされても、国内の本業が立ち行かなくなるようなことがないよう、しっかりと準備をしておかなければなりません。
後述しますが、海外進出にも、1から新会社を設立するケースから現地企業に生産委託する場合など、いくつか方法がありますので、自社の現状と生産能力や財務状況などを十分考慮したうえで無理のない進出プランを検討することが必要です。

海外進出の流れ

海外進出を検討する場合、準備から最終的な意思決定まで大きく分けて7つのステップがあります

海外進出を有意義かつ有益なプロジェクトにするためには社内での目的共有や無理のない計画、慎重なリサーチが欠かせません。それぞれのステップにおけるポイントや注意を詳しくご紹介していきましょう。

SETP1 海外進出目的の明確化

まずは自社がどのような目的で海外進出するのかを明らかにし、社内全体で共有しなければなりません。なぜ今なのか、国内ではだめなのか、資金や人材は整っているのか、他の選択肢はないのか、という問いに明確に答えられるようにしておく必要があります。そのうえで、海外進出の最終目的をはっきりと設定していきましょう。

STEP2 海外進出計画案の設計

多少大まかでもいいので、海外進出のプランを策定します。事業として達成すべき目標、特に最初の3年から5年程度で黒字転換できるような売上や市場シェア、純利益やコストを描いたうえで、それに必要な経費の算出や資金調達を検討をします。

STEP3 進出国の選定

目標やビジョンがある程度描けたら、それにマッチする進出国の選定に移ります。それぞれの国のニーズや状況をリサーチし、自社製品やサービスが合致するかはもちろん、外貨規制や輸入制度、労働条件、さらに話題になっているトレンドなどの情報を総合的に把握することで、具体的な進出国・地域を絞っていきます。

STEP4 市場調査

国内で成功した製品やサービスでも海外で同じ結果が得られるとは限りません。相手国の市場調査を行い、市場規模や顧客ニーズ、競合、法規制や慣習を知ることでどういった戦略が必要なのか、そもそも進出計画自体が実現可能なのか、といったことを判断します。まずは国内で、インターネットの情報や専門機関の資料、支援企業からのアドバイスなどを中心にリサーチを重ねていきます。

STEP5 現地調査

計画策定や市場調査などのデスクリサーチで具体的な進出先を絞り込んだ後、実際に現地視察を行います。ここでは店頭調査やインタビュー、専門家や公的機関へのヒアリングなどにより、生の情報を得ることが重要です。海外展示会に参加すれば、製品やサービスの需要を知ることもできますし、海外でのパートナー探しにも有効でしょう。海外視察を行う際は現地に詳しい専門家や支援企業からのサポートを受けることをおすすめします。

STEP6 海外進出計画の策定

現地調査を終え、進出先を決定したら次は本格的な実行計画を策定します。具体的なマーケティングやプロモーション、業務計画や人員採用計画、収支計画など、当初計画を修正・ブラッシュアップしながら予算や中長期的な達成目標を数値化していきましょう。

STEP7 最終的な意思決定

具体的な計画が策定できたら、これまでの調査や戦略を再確認し、ビジネスモデルや進出形態、コスト回収プランなど、進出の最終決定を行います。そのフェーズをクリアすれば、実際にプロジェクトチームの発足、現地での手続き実施、営業活動開始など、実行計画の遂行へと移っていきます。

海外進出の手段

(1)現地法人設立提携・合弁

日本企業が海外で法人を設立する進出方法で現地の税務や法律が適用されます。自社のみで出資する場合と現地企業や他企業と共同で出資する場合があります。
自社のみで出資する場合は経営戦略をコントロールできるといったメリットがある反面、国や事業内容によって規制されている可能性があります。合弁の場合は現地パートナー企業の実績や市場、ノウハウを生かすことができますが、相手の意向を汲まなければならず統合に時間がかかることがあります。

(2)販売パートナーとの契約(フランチャイズを含む)

現地企業と販売契約を結んで自社製品の販売を委託する進出方法です。すでに販売網を持つ現地企業に委託するため、外資規制法の適用外になるほか、初期投資が少ないなど、比較的低リスクで海外ビジネスに参入できるのがメリットです。その分、現地顧客の反応を得にくい、リターンが少ない、次のフェーズに進みにくいといったマイナスポイントがあります。さらに国によってはフランチャイズを請け負う企業(フランチャイジー)を優遇する制度を敷いている場合があり、訴訟リスクなどを確認しておく必要があります。

(3)輸出

国内で生産した自社製品を海外顧客に向け販売する方法で、商社や輸出業者を介する間接貿易と顧客に直接輸出する方法があります。現地企業の販売網を活用できる反面、マージンや輸送量が発生する分、販売価格が高くなる可能性があります。信頼できる取引先を慎重に選定することも重要です。

(4)越境EC

前述の直接輸出の一種であり、国外向けのECサイトを介して製品を海外向けに販売する手法が越境EC(いわゆるオンラインショッピング)です。自社でECサイトを構築する「自社EC型」と、複数のショップが集まるプラットフォームなどに出店する「ECモール型」に分けられます。
自社EC型ではサイト運営を自社で行うため、イメージ通りのブランディングが可能で販売手数料などのコストカットが可能である一方、宣伝や集客のノウハウや費用がかかるうえに対象国に合った決済システムを取り入れなければならないなど、準備に時間がかかる可能性があります。一方、ECモール型ではサイトやシステム構築といった初期投資や、管理運営の手間が省けるメリットがありますが、モールには競合他社の存在があることや出品手続きや手数料が必要になります。

(5)現地委託生産

自社製品の製造を海外進出先の企業に委託することを現地委託生産といいます。現地委託生産にはOriginal Equipment Manufacturing(OEM)とOriginal Design Manufacturing(O DM)の2種類があります。
OEMは企画・設計までを委託側(この場合日本企業)が行いますが、ODMは企画のみを自社で行い、設計から生産までを受託企業に任せる形式になります。
いずれにしても、生産を海外企業に委託することで設備投資といった製造コストや生産にかかわるリソース全般を削減することができます。また、生産ボリュームが少ない場合も海外進出しやすいというメリットがあります。ただ、増産・減産といった製造ペースをコントロールしにくいほか、ノウハウが蓄積しにくいなどのデメリットもあります。

(6)クロスボーダーM&A

M&AはMerger And Acquisition(合併と買収)の略で、「会社もしくは経営権の取得」を意味します。M&Aのなかでも売り手企業と買い手企業のどちらかが海外企業であるM&AをクロスボーダーM&Aといいます。
海外進出にあたり、現地企業とクロスボーダーM&Aを実施することで相手企業の持つノウハウや人材、市場や取引先を獲得することができるため、ローカライズなどの問題を解消する効果があります。また、海外資本誘致を促進するため税金面で優遇措置を講じている国もあるなど、コスト削減につながる可能性もあります。
一方、M&Aに応じる企業の選定やデューデリジェンス、手続き、社内統合など、進出までに時間がかかる恐れがあります。また制度の違いによる現場トラブル、訴訟リスク、カントリーリスクに備えておく必要があるでしょう。


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