ベトナムでは、経済成長により工業分野における新技術の開発と芸術分野における制作物が増加し、特許出願・商標登録、及び著作権保護のニーズが高まっている。ベトナム科学技術省知的財産局によると、2020年には、ベトナムでの特許出願 は7,694件、商標登録出願は55,579件であった。
一方で、知的財産法の有効性が諸外国と比べて低いだけでなく、国民の認知度も低く、更に法律改正が現在も継続的に行われている。産業貿易省によると、2020年には1,300件の知財侵害に対して、合計で250億ドン(約1,4億円、2022年5月のレートで約1円=178VND)以上の罰金が科せられた。このような状況下で、国内の発明家・企業は自分の技術を守れないだけでなく、海外企業からの信頼も低く海外との提携の足枷になっている。海外企業・ブランドにとっては、ベトナム知財法は改正や法律執行ガイドラインが多く、理解に時間がかかるため、ベトナム企業との提携、または技術や設備のライセンシングを難しくしている。
これまでの歴史に鑑みるに、日本とベトナム企業の関係がより親密になり、提携関係がさらに発展するのは確かである。したがって、ベトナムでの事業展開を実行する前に、ベトナムの知的財産法を理解することは、日本企業にとって大きなメリットになると考えられる。
本レポートでは、ベトナムでの事業展開・提携を検討中、将来検討したい事業会社向けに、特許法、商標法を含む工業所有権を中心に解説する。