今アフリカでは、急速な経済成長とともに多様な産業が発展し、新たなビジネスチャンスが次々と生まれています。しかし、アフリカへの進出には、大きな可能性が広がると同時に独自の課題も伴います。そのため、進出を成功に導くには、市場への理解を深めることが不可欠です。この記事では、アフリカの主要産業の現状から、そこに広がる市場とビジネスチャンスについて詳しく解説します。
アフリカ経済
「最後の成長大陸」と呼ばれるアフリカの経済は、2024年度以降、さらに躍進すると言われています。アフリカの経済は、2000年代から高成長を示していましたが、2020年に新型コロナウイルスのパンデミックにより悪化しました。2021年以降は回復の傾向を見せつつも、ウクライナ侵攻によるサプライチェーンの混乱、異常気象の影響などによって成長は減速しました。しかし、2023年のGDP成長率は4%に達し、2024年には4.3%に加速すると予想されています。(出所:アフリカ開発銀行グループ)
アフリカ経済は、2000年代からの石油価格の高騰を皮切りに、新興国の資源需要増に伴う輸出拡大で急速な成長を遂げました。また、1960年前後に独立を果たしたアフリカ諸国が3世代ほどの時間を経て、主要国の情勢が安定してきたことも経済成長の要因といえます。停滞した時期を乗り越えたとみられるアフリカの経済は、今後も中長期的な伸びが予想されます。
アフリカの主要産業
アフリカの成長を牽引する主要産業には、伝統的な農業や鉱業に加え、近年では通信・情報技術(ICT)やエネルギー産業、製造業があります。経済が成長する中で、各分野でも変化が見られており、世界からの注目を集めています。
農業
大きく経済成長を遂げた後も、食糧供給・経済成長の面を持つ農業はアフリカにとって重要な産業となっています。アフリカでは、農業が国内GDPシェアの20%以上を占める国が30カ国にも上っています。また、人口の約6~7割が農村に住み、その多くが小規模農家といわれています。(出所:日本財団)
しかし、人口増加に伴い更なる消費拡大が見込まれるため、農業の生産性を上げなければ食糧需要に供給が追いつかないことが課題として挙げられています。日本財団による農業技術向上といった支援のみならず、各種情報を活用した作付けアドバイスサービス、天候などの情報提供サービス、作物を売買するマーケット連携サービスなどのデジタル技術の活用も、生産性を上げる手段として推進が期待されています。
鉱業
アフリカには金やダイヤモンド等の宝石類から、IT製品製造に必要な鉱物まで多様な鉱物資源が豊富に存在します。特に、世界的に急速に進むEVシフトにより重要鉱物とされる銅、リチウム、マンガン、レアアースなどは、その埋蔵量の多さに全世界の企業が注目しています。重要鉱物のほかにも、アルミニウムなどの原材料もアフリカで産出されています。最大の貿易国相手となる中国の企業からの影響が強い中で、日本でも2023年にJOGMECが、重要鉱物の確保に向けて、アフリカ南部諸国にて覚書、実施合意書への署名を実施し、資源産出国へアプローチを始めました。しかし、港湾、道路、鉄道などの輸送インフラが整備されておらず、サプライチェーンのグローバル化を促進するには物流インフラへの投資、法整備が重要な課題となっています。
通信・情報技術(ICT)
アフリカのICT産業は、急速に発展しています。アフリカのモバイル普及率は2024年時点で50%を超え、2030年には80%に達するという見込みもあります。銀行口座がなくても決済利用できるサービスとして、モバイルマネー市場が急速に拡大しており、インフラの乏しさを逆手に取ることで技術革新が一気に進んだ形となっています。
しかし、いまだに銀行口座、モバイルマネー開設が普及していない国も多く存在することも事実です。ICTを活用した経済活動を活発化するには、国民ID・フィンテックを整備する必要があります。膨大なデータ流通を支える光ファイバーなどのインフラ整備の需要がさらに増えることも予想されるのです。
アフリカの中でも、ルワンダは「ICT立国」を掲げ、内戦の混乱から急激に近代化を果たした国です。「アフリカの奇跡」と呼ばれ、IT分野などの先端企業を呼び込み、自国の企業や人材を巻き込むことで産業や技術の全体水準を引き上げることを目指しています。また、首都キガリを中心にスマートシティを含む、国家全体のICT化を推進しており、アフリカ全体のスマートシティ化を牽引していくことが期待されています。
エネルギー産業
アフリカでは、石油やガス、太陽光や風力などの再生可能エネルギーも含め、エネルギー資源が非常に豊富です。石油・ガスの分野では、ナイジェリアが最大の資源国であり、貴重な外貨獲得の産業となっています。特に、天然ガスにおいては脱炭素化へシフトされる中、その重要性を強調し、EUなどの外資にガス開発プロジェクトへの積極的な投資を呼びかけています。
再生可能エネルギーの分野では、豊富な資源をもつ国が民間と連携して、様々なプロジェクトが動いており、アフリカの再生エネルギー発電容量は、前年より4.6%増の62ギガワットに達し、世界シェアは1.6%となりました。
しかし、過去20年間でアフリカに振り向けられた再エネ投資は世界全体の2%未満に過ぎず、エネルギー転換は立ち遅れていると言わざるを得ません。そのため、2023年のアフリカ気候サミットで採択されたナイロビ宣言に基づき、アフリカの再生可能エネルギー容量を2030年までに大幅に増やす目標を掲げています。特に北アフリカが、太陽光発電と風力発電において大きく期待されており、エネルギー転換の最有力候補と目されています。(出所:ジェトロ)
製造業
人口が拡大していくアフリカにとって、利益のみならず雇用機会を創出する製造業は重要な産業となります。ジェトロによると、2010年から2021年の間にアフリカ37カ国の工業化が進んでいることが明らかにされています。また、工業化が最も進んでいる地域は北アフリカとなり、南部、中央がそれに続く形となります。北アフリカは、地理的な優位性から、自動車・繊維業をはじめとした欧州の製造業の拠点として存在感を高めています。国別では、南アフリカ共和国が製造業において発展しており、日系企業の進出も多く見られます。日系自動車メーカーであるトヨタ、日産は、現地に工場を構えており、周辺には自動車部品メーカーも進出しています。また、日系大手タイヤメーカーの住友ゴム工業とブリヂストンも、生産・販売拠点を設置し、アフリカ地域全般でのビジネス拡大が進められています。(出所:ジェトロ)
まとめ
アフリカは豊富な資源と成長産業を有し、今後も重要な市場として大きな期待が寄せられています。農業、鉱業、ICT、エネルギー、製造業などの各産業は、社会課題の解決を通してイノベーションとビジネスチャンスを生み出しています。アフリカ進出を成功させるためには、各産業の現状を十分に理解し、柔軟な戦略と適応力を持って取り組むことが鍵を握ります。